インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」の管理人、水瀬ケンイチさんの新刊を読みました。
本書は2017年に出版された「お金は寝かせて増やしなさい」のマンガ版。
あとがきによれば、「活字離れ」が進んでいる若者世代にインデックス投資による資産形成が決して難しくないということを伝えたい、との思いでマンガ化が実現に至ったとのことです。
本書の元となった原著については、以下の記事でレビューを書いています。
マンガと活字
本書の特徴は、その名のとおり何と言ってもマンガ。
原著にもマンガパートは少しありましたが、本書ではその分量やストーリー性がさらに充実しています。
確かにこれなら若者世代が手に取るハードルはかなり下がりそう。
著者の思いは見事に奏功していると思いました。
一方で、本書は活字もかなり多いです。
マンガとはいえ、扱っている内容はお金にかかわること。
デフォルメ化して「軽く」するのは危険、誤解を与えないようにする、大事なことは漏れなく伝える、という判断なのでしょう。
このあたりのバランスは著者も相当気を遣ったのではないかと推察します。
このため、言い回しが変わったところも少しありますが(「ガラガラ・・・・・・ピッシャーン!」は健在)、内容そのものは原著とほぼ同じ。
インデックス投資を行う上で必要な知識や心構えが網羅されています。
さらに、2017年出版の原著と比べ、インデックスファンドや非課税投資制度などの情報は最新のものに。
このため、マンガ版であると同時に、バージョンアップ版といった印象を持ちました。
原著は13万部突破のベストセラー。インデックス投資の裾野は着実に広がっています。
本書がブースターとなり、さらに多くの層にインデックス投資の存在が知られるようになると思います。
リアリティとエンターテイメント
また、ある意味、本書には「投資」という小難しいテーマをマンガ化した意欲作という側面もあります。
マンガ化にあたっての一つの難所は「どこまでリアリティを追求して、どこまでエンタメ要素を強くするか」のバランス。
実際、本書のマンガの内容には「おや?」と思う描写がいくつかありました。
このあたりはエンタメ性を優先させたものと受け止めています。
インデックス投資自体はすこぶる地味なので、リアル路線を貫けば面白いマンガになりませんからね。
ここに注目!
最後に、私が本書を読んで最もためになった箇所を紹介します。
それは、見開き2ページにわたって掲載されている「涙と苦労のインデックス投資家20年実践記」のグラフ。
原著でも同様のグラフがあり、目玉の一つでした。それが本書では直近の状況まで記録されているわけです。
そのなかで特に私が注目したのは、著者の損失の「絶対額」です。
グラフを見ると、2008年のリーマン・ショックのとき、リスク資産が1000万円弱減ったようです。
そして12年後。2020年のコロナ・ショックで減少した資産は、なんと2000万円近く!
リスク資産総額が増加するにつれ、一時的な含み損もかなりの規模になることが一目で分かります。
「コロナ・ショック」なんて、今となってはその存在すら忘れがちなのに、それでも2000万円か…。
著者は常々「自分のリスク許容度を把握することが最も大切」と強調していますが、実際の額面を示されるとよりリアルに理解できます。
私の資産額はまだまだ著者の足元にも及びません。
でも、「仮に自分の身に同じことが起こっても耐えられるか」という視点で、改めて自分のポートフォリオを見つめなおそうと考えたのでした。