8月31日、各省庁の令和5年度税制改正要望が公表されました。
その中で個人投資家注目の案件が、NISAの抜本的拡充です。
資産取得倍増プランとは
要望内容は、金融庁の下記プレスリリース資料P4に掲載されています。
「資産所得倍増プラン」関連要望として真っ先に挙げられていて、金融庁の気合が垣間見えます。
「資産所得倍増プラン」というのは岸田内閣が掲げる新たな政策で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太の方針に盛り込まれました。
(「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」)
我が国の個人金融資産2,000兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている。投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けた iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。その際、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図る。経済財政運営と改革の基本方針2022(P7)から抜粋(太字は筆者)
骨太の方針にここまで書いておいて何もナシはさすがに考えにくい。
年末に向けては、税制改正大綱のほか、資産所得倍増プランの議論も要チェックです。
NISA拡充案の説明会
金融庁は、税制改正要望を発表したその日の夜、NISA拡充案について個人投資家向けオンライン説明会を開催したようです。
さすが金融庁!
私は仕事の都合で参加できませんでしたが、参加したブロガーの皆さんの記事で説明会の様子が分かりました。
なかでも、虫とり小僧さんの記事には説明会の具体的な様子に加え、他の参加ブロガーの記事一覧も掲載されています。
税制改正は限りあるパイの分捕り合戦
税制改正要望は各省庁が財務省に対して行いますが、そのバックには関連業界がいることがほとんど。
例年、あらゆる省庁のあらゆる業界が総力を挙げて、与党政治家に要望実現を働きかけます。
特に年末の自民党本部の熱気は物凄いものがあります。
しかし、これらの税制改正は基本的に減税、つまり歳入の減少を伴います。
このため、すべての要望を通すわけにもいかず、最後は取捨選択が行われます(実際に与党税調で項目ごとに○×を付ける作業を行います)。
NISAの抜本的拡充案は、事実上、こうした他の業界が推す要望項目と争うことにもなるのです。
また、このテの政策に対して必ず出される「金持ち優遇」批判にも応えねばなりません。
現に私がそうであるように、「投資する人=金持ち」とは限らないのですが、今日の生活に困っている人がいるのも事実。
「金持ちのためにお金を使うなら、その分を生活が苦しい人に回すべき」との批判に政府与党はどう説明するか。