おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密 (しごとのわ)
- 作者: 高井浩章
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2018/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
本書を手に取ったきっかけは、虫取り小僧さん、はちどうさんのレビュー記事でした。mushitori.blog.fc2.com
今年の4月、これらの記事が立て続けに投稿されて以来、本書はとても気になる存在でした。
それから少し時間が経ってしまいましたが、遅ればせながら私も拝読して感銘を受けたので、感想などを書き綴りたいと思います。
ビャッコさんの設定がイイ!
私が考える本書の最大の特徴は、「教室形式」という一見よくあるスタイルを採りながら、その設定に絶妙な仕掛けが施されているという点です。
そもそも「教室形式」の本はそれほど珍しいものではありません。そしてその多くは、物知りな先生がごく普通の生徒にレクチャーしていくというスタイルです。
これはこれで分かりやすくて私も好きなのですが、本書では、さらにひと工夫が加えられています。すなわち、さりげなく登場人物の人物像(設定)を筆者が伝えたいおカネの話題に関連づけているのです。
特に、どこか陰のある女子中学生「ビャッコさん」の設定が他に例を見ず、秀逸だと思います(ネタバレになるので詳細は控えます)。
おカネへの親近感アップ
こうした巧みな設定により、物語がより味わい深いものになっているのは言うまでもありませんが、加えて、筆者が伝えたかった(と思われる)ことが読者にしっかりと届けられているように思えます。
生徒たちとともに「おカネの教室」で学び終えた読者なら、きっと、おカネへの抵抗感が雲散霧消していることでしょう。そして、おカネについて語ることは決して後ろめたいものではなく、むしろ楽しいことだと気付くようになっているはずです。
「もっと、お金の話をしよう。」
これは野村アセットマネジメントのインデックスファンド、Funds-iシリーズの最新コピー。読後、真っ先に頭に浮かんだのがこのフレーズでした。
片手間で投資をかじっている私のような人にはもちろん、普段はあまりおカネについて思いを巡らす機会がない人にとっても、様々な発見や感動が得られる良書だと思います。
おまけ:私がかつて中学生から受けた質問
本書の舞台は中学校で、おカネのことを学ぶ2人の生徒はともに中学2年生です。
私は数年前のある出来事を思い出しました。
それは、ちょっとした縁で、進学校の中学生数名に簡単な社会科の授業(のようなもの)をしたときのこと。
「需要」と「供給」のことを説明している際、何気なく「なかなか売れないモノは、値段を安くしないといけない」と話したのですが、ある中学生からこんな質問を受けたのです。
「なぜ値段を安くするのか?『高くする』の間違いではないか?なかなか売れないんだったら、1個当たりの値段を高くしないと儲からないじゃないか」
当時この質問をもらい、とても驚いたことを今でもよく覚えています。
なぜなら私もかつて同じような誤解をしていたときがあったから。どうしたわけか、「売り手」という当事者の目線で物事を捉えていたのです。
今となっては「あの頃は若かった…」の一言ですが、そんなこともあって、中学生の経済知識レベルなんてそんなもんだろうとずっと思っていました。
ですので、本書に出てくる生徒たち(そしてその先にいる筆者のお子さんたち)はすばらしく聡明で、溢れんばかりの経済センスの持ち主だな!と関心せずにはいられませんでした。
ちなみに、「あとがき」には、彼ら登場人物は「Kindle版では小学生だった」と書かれてあり、さらにビックリしたのでありました。