先日、自民党の新総裁が決まりました。
新内閣発足、衆議院解散を経て、いよいよ今月末(※10/10修正)、総選挙が行われることになります。
私の仕事はこうした政治動向に大いに影響を受けるので、今後どうなっていくか気が気でなく…。
そんなタイミングでたまたま手に取ったのが、この小説でした。
あらすじと感想
Amazonのページには、以下のように紹介されています。
厚生労働省キャリア技官の松瀬尊、30歳。『官僚たちの夏』に憧れ、念願の官僚となるも、その実態は、深夜残業は当たり前、ブラック企業顔負けの現場だった……。
さらに、「ゆとり世代直撃」なノンキャリの後輩、激烈パワハラ上司、フリーライダー同然の先輩職員の尻拭いに追われ、国会議員からの突き上げ、関係省庁と板挟み。さらには「国民」からの苦情電話に苦悶する日々を送っていた。
そこに突如、新潟県で謎の公害病が発生。孤立無援のまま原因究明に追われる松瀬だが、ある謀略により「忖度官僚」として国民の非難の的となり……。組織とは、政策とは、そして国家とは。
痛快かつ切実な、新たな官僚小説の決定版!
読んだ感想としては、面白かったです。続きが気になり、一気に読み終わりました。
霞が関勤務の私から見ても、細かいところまで忠実に描かれていると思いました。
ただ、上記のあらすじから何となく察せられるように、登場人物の設定が安直すぎるのが少し残念でした。
一部の霞が関のイメージにそのまま乗っかっているような…。
リアリティを追求するなら、もっと登場人物像を作り込んでほしかったです。
本書は「新たな官僚小説」と銘打たれ、表紙デザインも「官僚たちの夏」をモロに意識したものとなっています。
なのに、中身では「官僚たちの夏」のような重厚さが感じられなかったように思います。
さらなるツッコミ
さらに気になったのが、クライマックスに向かう重要な場面。
主人公はずっと「一人」で謎の公害病に関する諸々の案件に対応していました。
しかし、「2つの理由」によって、突如、周囲が組織的に協力するようになります。
小説だから仕方ないとはいえ、美しいストーリーに仕立てようとするあまり、この「2つの理由」にはかなり違和感がありました。
詳しく書くとネタバレになるので自粛しますが、この場面は物語のターニングポイントだっただけに、余計に粗さが目立ち、シラけてしまいました。
どうせ「急に周囲が協力しはじめる」という展開にするのなら、「主人公が過労で倒れて初めて周囲がマズいと気付いた」とした方がずっとリアルです。
悲しき「あるある話」ながら、実際に本作でも主人公は無断欠勤したのだし。
でもまあ面白い小説でした
以上、いろいろイチャモンつけましたが、エンターテイメントとして面白い小説だったことは確かです。
たまたま私が国家公務員だから細部が気になり過ぎただけ。
銀行員が「半沢直樹」シリーズを、警察官が横山秀夫の刑事モノを読んだときにも同じような思いをしていたのかもしれません。
業界外の読者の皆さんならきっと普通に楽しめるはずです。