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霞が関で働く国家公務員が、資産運用・NISA・iDeCo(個人型確定拠出年金)など、おカネについて綴ります。

年金は1日1食のお弁当~「お金の常識を知らないまま社会人になってしまった人へ」(大江英樹著)を読了~

元証券マンで経済コラムニストの大江英樹氏の本を読みました。氏の著書を拝読するのはこれで2作目です(1作目の書評はこちら⇒はじめての確定拠出年金投資(大江英樹著)を読了)。 

お金の常識を知らないまま社会人になってしまった人へ

お金の常識を知らないまま社会人になってしまった人へ

 

私はまさに本書のタイトルどおり、お金の常識を知らないまま社会人になってしまったクチです。それから10数年、少しは常識をわきまえたつもりでいましたが、本書を読んで、まだまだ理解が浅いことだらけだと気付かされました。

そして、とりわけまもなく社会人になる人、社会人になったばかりの人には、今すぐ一読することを強く勧めたいと思います。

 

お金についての「考え方」を教えてくれる本

本書は「はじめに」でも宣言されているとおり、お金儲けのノウハウではなく、お金の増やし方・使い方についての思考や行動のポイントがまとめられた本です。

このため、どんな状況下でも応用が利く骨太の考え方を知ることができます。

構成についても、難しくなりがちな話を分かりやすく伝える工夫がなされています。

特に、ところどころで「大江先生」とケンジ・マユミという2人の若者のやり取りが出てきます。この部分は本編を補足したり、発展させる位置づけのようですが、ケンジもマユミも実に素朴で良い質問を繰り出すのです。

このため、これに対する大江先生の回答も本質的な考え方を説くものとなり、私にも「へえ~なるほどね!」といった内容が盛りだくさんでした。

詳細は本書を手に取ってお確かめください。

 

1日1食の年金弁当

本書は、貯蓄、投資、保険、クレジットカードなど、お金にまつわる基本的な事項が網羅されています。それぞれとても役立つ内容ばかりなのですが、特に印象に残ったのは「年金」に関する部分です。

思うに、年金制度ほど多くの人に誤解されている制度はそうそう見当たりません。そして、その誤解が人々の不合理な行動(意図的な未納)や過度の不安につながっているとしたら、それはあまりにもったいないこと。

本書では、年金が「貯蓄」ではなくて「保険」であることを指摘し、この事実を基に多くの誤解を解こうと試みています。

さらに、公的年金のことを「国が死ぬまで支給してくれるお弁当」と例え、それが「1日1食しか支給されない」と説明します。

まさに言い得て妙。公的年金の性格・位置づけをたった一言で正確に表現した、素晴らしい例えだと思います。そう、公的年金は終身支払われますが、老後の生活をすべて保障してくれる制度ではありません。このため、すべからく自助努力が必要となってくるのです。

本書の年金に関する一連の記述は、目から鱗が落ちる思いの連続でした。「年金は1日1食のお弁当」、この例えがもっともっと広まれば良いのに、更に言うなら厚生労働省もこの例えを使えば良いのに、と考えずにはいられませんでした。

 

これから投資を始める人のためのエントリーブックでもある

最後に。本書に書かれていることは、すべて資産形成にもつながっていきます。お金に関する正しい理解は、iDeCoやつみたてNISAを利用する際の大前提となるからです。

これから投資や資産運用を始めようとしている方におかれては、どの証券会社で口座を作れば良いか、どの税制優遇制度を使えば良いか、どのインデックスファンドを選べば良いか等といった、具体的な方法論に入る前に、まず本書を読んで「お金についての基本的な考え方」を身に付けるのが吉と思います。