金融庁が主催する個人投資家との意見交換会「つみたてNISA Meetup」(つみップ)に参加してきました。
テーマは「『職場つみたてNISA』の普及について」。
職域を通じて資産形成に関する理解が深められないか、「職場つみたてNISA」の普及について、ゲストをお招きし、みなさんと意見交換を行います。
金融庁の担当者は今回の意見交換会のことを「作戦会議」と表現されていて、変わらぬ双方向のスタンスが嬉しかったです。
職場つみたてNISAの導入
まず、金融庁から、2018年1月のつみたてNISA開始に併せて「職場つみたてNISA」を導入する旨の説明がありました。
6,000万人いる雇用労働者に制度への関心を持ってもらうために職域を活用するという発想。「隗より始めよ」という格言どおり、まずは金融庁で始めるそうで、そのポイントは次の4点です(金融庁資料から抜粋)。
- つみたてNISAとiDeCoの情報提供 ⇒資産形成に関する多様なニーズに対応
- 金融・投資教育を実施可能な金融機関を募集 ⇒職場を通じ、金融・投資教育を展開
- 口座振替方式の採用 ⇒転勤時などの職員の利便性に配慮
- つみたてNISA(定額積立による投資信託の購入)が、法令・内規に抵触しない旨を改めて周知 ⇒適正な投資について、無用の懸念を払拭
その後、活発な質疑応答、意見交換へ。どの意見も回答もとても勉強になりましたがここでは割愛。
私は、「職場つみたてNISA」なのにiDeCoもセットで情報提供するの?と気になり、次のような質問をしました。
つみたてNISAとiDeCoをセットで情報提供することは良いことだと思うが、せっかく金融庁が「職場つみたてNISA」という普及のためのアイデアを出したのにiDeCoはフリーライドしているのでは?所管する厚生労働省はちゃんと汗をかいているのか?
イベントの趣旨からは少しズレた質問でしたが、金融庁、ゲストの一人である大江加代さんからそれぞれ丁寧にご回答いただきました(どうもありがとうございました)。
iDeCoも長期・積立投資に適した制度なので、一緒に情報提供することが重要。「職場つみたてNISA」を発表する際にiDeCoにも言及することは、厚生労働省にも話してあり、了解を得ている。一緒に仲良くやっている。(金融庁)
自分はiDeCoのセミナーに出させていただいているが、厚生労働省担当者からは「つみたてNISA」の話もしてほしいと言われて、実際に紹介している。つまり、厚生労働省も逆に「つみたてNISA」の普及に一役買っている。(大江さん)
確かに、先日の「つみたてNISAフェスティバル2017」では、「私が考える『つみたてNISA』と『iDeCo』の活用法」という素晴らしい企画があり、つみたてNISAだけでなくiDeCoの活用法もセットで考えるという内容になっていました。
また、今度、中央省庁職員を対象とした「霞が関iDeCoセミナー」が開催されるのですが(そして講師は大江加代さん!)、そこでもつみたてNISAの解説がなされると聞いています。
「今やこの2つの制度はセットでPRしていくべきものなのだ」と強く思った次第です。
職場つみたてNISAを投資信託との出会いの場に
「職場つみたてNISA」は成功するか、という点については、「金融機関側のメリットが少なく本気で取り組んでくれないのでは」等々、否定的な意見もあるようです。
「つみップ」からの帰りの道すがら、いろいろ考えたのですが、「職場つみたてNISA」に「ゲーム」という要素を採り入れてみてはどうでしょうか。
念頭にあるのは、(株)三菱UFJ国際投信が開催しているこの企画です。
これは、仮想資金100万円で、eMAXISシリーズのファンドを組み合わせてポートフォリオを作り、リスク当たりのリターンの大きさを競うコンテスト。個人戦とチーム戦があり、それぞれの上位者には賞金も出ます。
これと同じようなことを、「職場つみたてNISA」を導入した企業・官公庁でやってみるのです。その名も「つみたてNISAの達人」、主催者は金融庁です。
仮想通貨ではなく本当のお金が絡む話なので、初心者にはなかなか「ゲーム感覚」とはいかず、心理面での抵抗は強いかもしれません。しかし、毎月1,000円の投資くらいなら、職場内で結成したチームメンバー同士で上がっただの下がっただのと盛り上がれるのではないでしょうか。
このゲームへの参加は、投資信託というものと出会うことを意味します。
この日のゲストの野村亜紀子さん(野村資本市場研究所)によれば、米国では1980年代以降、401K(確定拠出年金)が投資信託との出会いの場になり、そこで米国人は経験値を積んでいったとのこと。それが今の米国における「株式・投信等の保有割合が高いこと」の要因の一つだそうです。
きっかけはゲームでも何でも良いのですが、「職場つみたてNISA」の場で投資信託に出会い、出会いが経験につながり、経験が成功体験に変わり、そのまま投資を続けるようになった…という流れになれば理想的ですね。