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霞が関で働く国家公務員が、資産運用・NISA・iDeCo(個人型確定拠出年金)など、おカネについて綴ります。

つみたてNISAとiDeCoの統合?

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またまた、つみたてNISAとiDeCoに関する話題です。

先日の「つみたてNISAフェスティバル2017」で興味深い一コマがありました。

具体的な内容は忘れてしまいましたが、およそ次のようなやり取りだったと記憶しています。

個人投資家:「将来的にはつみたてNISAとiDeCoを統合してほしい」

金融庁担当者:「iDeCoは年金なので、制度の趣旨が違う。統合は難しい」

 

統合、本当に難しいのでしょうか?

 

両制度の共通点

実際、つみたてNISAとiDeCoには多くの共通点があります。

  • 証券会社や銀行などの金融機関に口座を開設
  • 積み立て投資を通じて、長期の資産形成を促進
  • 運用益が非課税となる税制優遇

つみたてNISAとiDeCoは、ここ最近、様々な媒体でも「資産形成のための制度」として並列的に扱われており、「同じような制度なら一つになった方が分かりやすい」と考えるユーザーが出てくるのは当然です。

 

両制度の相違点

一方で、金融庁担当者がお話しされたように、「iDeCoは年金なので、制度の趣旨が違う」という説明も間違いではないと思います。

おそらく、ここでいう「年金」が意味するところは、「公的年金に上乗せすることで、高齢期により豊かな生活を送るための制度」ということでしょう。現にiDeCoの口座で積み立てた資産を引き出すことができるのは、原則60歳からとなっています。

つみたてNISAの方は、あくまで「長期」の資産形成を促す仕組みです。非課税期間は最長20年間であり、非課税期間の途中でも口座から引き出すことができます。

このため、つみたてNISAで築いた資産については、30代や40代で住宅購入資金や子どもの教育資金に充てることも可能です。iDeCoに比べると、その用途は広くて柔軟です。

このように、つみたてNISAとiDeCoはとても似ていますが、異なる活用方法が考えられるのです。「分かりやすさ」「シンプル」といったことを差し置いても、両制度が並立していることには十分意味があると思っています。

 

実現可能性は低い

また、仮に制度趣旨の違いに目をつぶったとしても、統合の実現可能性は低いと考えています。

いま現に走っている制度は途中で打ち切れない

まず、iDeCoは恒久的な措置として、つみたてNISAは投資可能期間20年間・非課税保有期間20年間の措置として、既にそれぞれ制度化されています。

それらを統合するとなると制度の中身がガラリと変わり得ます。その場合、各口座で清算が必要となりますが、そうした「繰上げ償還」のようなことを国家が行うのはなかなか難しいことです。国の信用にも関わります。

途中での打ち切りを避けるには、「現行のiDeCoとつみたてNISAを存置したままで、統合した新制度をスタートさせる」といった方法も考えられます。しかし、制度の数ばかりが増えるので、かえって混乱を招くだけでしょう。

省庁間の権限争い

次に、とても卑近な話ですが、統合しようとしても、つみたてNISAを所管する金融庁iDeCoを所管する厚生労働省との間で、おそらく調整がつきません。

霞が関への批判として「省益あって国益なし」というものがあります。最近は昔ほど酷くはないように思いますが、確かに省庁間の壁は厚くて高い。

幼稚園(文部科学省)と保育園(厚生労働省)が一元化できないのも、省庁間の権限争いがあり、さらにそのバックで様々な利害(そこで働いている人の処遇など)が絡み合っているからと言われています。

つみたてNISAとiDeCoの裏にはどんな利害があるのかは分かりませんが、残念ながら、省庁の垣根を超えた制度の統合は非現実的でしょう。 

 

現行iDeCoの手直しによって…

以上のように、つみたてNISAとiDeCoの統合は夢物語に終わりそうです。

ちなみに、私個人としては、今後、現行iDeCoには「手直し」が必要だと思っています。

それは、つみたてNISAがまさにそうしているように、iDeCoの運用商品に一定の基準を設け、監督官庁への届出制を導入するということです。

その基準は現行つみたてNISAよりもさらに厳しくてかまいません。もちろん元本確保型商品も認めません。

iDeCoにも「おせっかい」な規制を持ち込むことになりますが、万人が安心して老後に向けた資産形成を行えるようにするには、こうした規制はあって良いと思うのです。

そうすれば、つみたてNISAとiDeCoは「事実上統合した」と強弁できるようになるかも…。