6月17日、第201回国会(常会)が閉会しました。
2月頃からは新型コロナウイルス感染症関係の議論一色でしたが、個人投資家にとって重要な法案も成立しています。
その名も「所得税法等の一部を改正する法律案」。
これにより、NISA制度の見直し・延長が正式に決まりました。
改正法の概要
所得税法等の一部を改正する法律は、多種多様な税制改正を行う法律で、NISA関連はその一部です。
1.法律案の概要
個人所得課税
○ NISA制度の見直し・延長
・つみたてNISAを5年延長
・一般NISAは、積立・分散投資を促進する観点から見直しを行った上で、5年延長
(第201回国会における財務省関連法律 : 財務省 の「所得税法等の一部を改正する法律案」の概要資料より抜粋して引用)
ちなみに、NISAは金融庁が推進していますが、一定の少額投資を非課税にする「税制上の措置」なので、国税に関する法律を所管する財務省が法案を作成・提出しているのです。
法律は成立したけど…
さて、無事に法律が成立し、「令和2年度税制改正の大綱(令和元年12月20日閣議決定)」に盛り込まれた「NISA制度の見直し」は実現の運びとなりました。
では、半年遅れで、NISAの見直し内容を確認してみよう!
が、しかし、2024年から始まる新NISAとやらが難解ホークス。
竹川美奈子さんの以下の解説のおかげでだいたい理解できましたが、それでも私が人に説明するのは難しそうです。
また、昨年12月末、金融庁が個人投資家向けに「NISA関連税制改正説明会」を開催しており、多くのブロガーが参加レポートを書いています。
新NISAができた経緯の説明もあったようで、理解の一助となりました。
しかし、新NISAの中身を知れば知るほど、その良い悪いは別として、複雑怪奇だなあ…という感想がわくばかり。
つみたてNISA派の自分が使うことはたぶんないものの、とても残念な気持ちです。
複雑であるが故に
というのも、新NISAが複雑であることが、つみたてNISAの普及に悪影響を及ぼしかねないと思うからです。
例えば、NISAに興味を持った投資初心者がいたとします。
その人がまず最初に接するのが「NISAには新NISAとつみたてNISAの2つあります」という話。
ここまではギリギリ何とかなりそうです。しかし、おそらく次に目にする情報は「新NISAは2階建てになっていて(以下略)」…ん、んん??
そこで多くの人は頭がくらくらして「なんかNISAって難しそうだな…」と、NISA全てを敬遠してしまうのではないでしょうか。
調整の産物
私も同業者ですので、様々な経緯があってあの見直しに至ったことは容易に想像できます。
公の場では言えないようなキワドイ話もあったかもしれません。
すなわち、ある政策を立案し、実現しようとする過程では、利害関係者、関係省庁、与党などとタフな調整を行うことになります。
その結果、当初のシンプルな原案が変容してしまうことがしばしば起こります。不本意でもそれが今の政策決定プロセス。
なので、金融庁担当者のご労苦には心から敬意を表したいですが、それでもやはり新NISAは複雑すぎます。
つみたてNISAで安定的な資産形成を
金融庁がNISAの中でもつみたてNISAをイチ押ししていることはNISA特設ウェブサイトを見れば明らかです。
中でも、個人投資家との意見交換会「つみたてNISA Meetup」は、霞が関には従来なかった啓発手法。
「家計の安定的な資産形成」という政策目標の実現のため、あらゆるアプローチを採り入れようとする姿勢には嫉妬すら覚えます。
しかし、今回こんなことになった以上、「新NISAはひとまず無視」「つみたてNISAから始めればOK」くらいの広報をしないと目標実現は覚束ないYO!と言わせてほしい。
おこがましいですが、新NISAの複雑怪奇っぷりを憂えてみました。