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霞が関で働く国家公務員が、資産運用・NISA・iDeCo(個人型確定拠出年金)など、おカネについて綴ります。

株や投資信託を売却したら児童手当や保育料に影響するか?

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私には未就学の子どもが1人います。現在、児童手当をもらったり、保育所に預けたりと、行政サービスを受けながら子育てしています。

そんな中、実はずっと「ファンドを売って譲渡所得を得たら、児童手当や保育料に影響が出るのではないか」と考えていました。

「影響」とは、具体的には、児童手当が「減額」となったり、保育料が上がったりするということです。

しかし、いろいろ調べた結果、今の私の場合に限って言えば、これは誤解だったということが分かりました。

多くの投資家にとっては常識なのかもしれませんが、恥ずかしながら、私に税金やその周辺に関する基本的知識がほとんどなかったということです。

とはいえ、良い勉強の機会となりましたので、備忘も兼ねて整理しておきたいと思います。

 

児童手当と保育料

まず、児童手当とは、家庭等における生活の安定と児童の健全育成を目的として、0歳から中学校卒業までの児童を養育している方に支給される現金給付です(内閣府ウェブサイトより)。

手当(月額)は次のとおり。

  • 0~3歳未満 一律15,000円
  • 3歳~小学校修了まで 第1子・第2子:10,000円 第3子以降:15,000円
  • 中学生 一律10,000円

そして、この児童手当の支給には所得制限があります

給与所得や譲渡所得などを足した「所得額」から、医療費控除や小規模企業共済等掛金控除(iDeCoの所得控除はコレのこと)等の控除額を差し引いた額が、扶養親族の人数に応じて設定されている「所得制限額」以上となった場合に、児童手当の支給額が上記から5,000円に「減額」されるのです*1

また、保育料はいわずもがな、子を保育所に預けている保護者が市役所に支払うお金です。住民税額によって決められているため、税額が多いほど、保育料も高くなります

譲渡所得が入ることで合計の所得金額は増えることになるため、児童手当が「減額」されたり、保育料が上がったりするのではないか、と考えていたのです。

 

疑問に対する私の理解

この考えはある意味「正解」でしたが、「間違い」でもありました。

先に結論を申し上げれば、特定口座(源泉徴収あり)内で株や投資信託を売却して得られた利益(譲渡所得)は、確定申告しなければ児童手当や保育料には影響しないのです。

このことについて、私の理解に沿って解説したいと思います。

 

申告をしなくて良い所得

まず前提として、株式や投資信託の譲渡所得については、「申告をしなくて良い所得」と「申告が必要な所得」に分けられます。

このうち、特定口座(源泉徴収あり)で発生した譲渡所得は、そこから計20.315%の所得税と住民税が源泉徴収されるため、「申告をしなくて良い所得」に当たります

また、「申告をしなくて良い所得」であっても、医療費控除を受けたり、他の所得との損益通算を行ったりするために、確定申告することも可能です。

 

「確定申告をしなければ」がミソ!

そしていよいよ本題です。

まず、児童手当については、前述のとおり、給与所得や譲渡所得等の合計額から一定の控除を行った額と、所得制限額とを比較して、「減額」となるかどうかが決まります。

また、保育料を決める住民税額についても、各種所得の合計額をベースとして、あれこれ計算して決定されます(非常に複雑なので詳細は割愛)。

そして、特定口座(源泉徴収あり)で発生した譲渡所得については、原則として、これらの「合計額」には含めない、というルールになっています。

例外は確定申告を行った場合です。このときは、所得の合計額に特定口座(源泉徴収あり)の譲渡所得も合算することになります。

以上をまとめると、確定申告をしない限りは、特定口座(源泉徴収あり)で発生した譲渡所得が児童手当や保育料に影響を及ぼすことはありませんよ、ということなのです。

 

確定申告する場合はよく考えてから!

目下、私には確定申告する必要がありません。今年も然りです。

すなわち、海外ETFは持っていないし(=分配金への二重課税がない)、投資信託の譲渡損失もありません(=損益通算できない)。

また、医療費控除を受けられるほど医者にはかかっておらず、ふるさと納税では「ワンストップ特例制度」を利用しています。

むしろ、ほんの少しばかりの控除のために確定申告を行ってしまうことで、児童手当が減って、保育料(&その前提の住民税)が上がり、トータルでは損になることも大いにあり得ます。人によっては、配偶者控除の対象から外れたり、国民健康保険料や各種医療費助成制度の自己負担上限額などが上がったりすることもあるでしょう。

確定申告をする場合には、「控除を受けられるメリット」と「給付や税金・保険料への影響というデメリット」をよく比較した上で判断した方が良さそうです。

私の場合は、今後もなるべく確定申告を行わずに済ませたいと思っています。

 

最後に、留意事項だよ

以上の記載は、税素人の私が自治体や国税庁のウェブサイトを参考にしてまとめたものです。特に練馬区公式ホームページが分かりやすかったです。

株式等の譲渡益や配当に対する税金:練馬区公式ホームページ

細かい点は端折ったり、「申告分離課税」などのキーワードを避けたりしながら解説を試みましたが、もし私の理解に誤りや不足がありましたらご指摘いただければ幸いです。

また、住民税の計算方法や保育料の決め方などについては、自治体によって異なる場合があります。不明な点があれば、お住まいの自治体の担当者に直接確認していただくのが最も確実です。

そして、今回の記事は、あくまで「株や投資信託の譲渡所得」のケースについて整理したものです。他の譲渡所得や配当所得など、それ以外のことについてはまた別のルールがあり得ますので重ねてご留意ください。

ましてや、今を時めく仮想通貨の取引で得られた利益は「雑所得」。現在の税法上、株や投資信託と比べてかなり不利に取り扱われています。

そうした周辺のことも、今回いろいろ調べている中で知ることができたのでした。

*1:厳密に言えば、この5,000円は「特例給付」と呼ばれていますが、事実上「減額」と考えて良いと思います。「特例給付」は、その名のとおり、あくまで暫定的な位置付けであり、現に2017年には廃止の動きがありました。このときは結局「存続」で決着しましたがもはや風前の灯火か…。