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霞が関で働く国家公務員が、資産運用・NISA・iDeCo(個人型確定拠出年金)など、おカネについて綴ります。

解説!給料から引かれる保険料の決まり方(後編)

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健康保険や厚生年金保険の保険料の決まり方について解説する記事の後編です。

前編では、これらの保険料は「標準報酬月額×保険料率」で決まることと、「標準報酬月額」のことを紹介しました。今回は残る「保険料率」についてです。

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保険料率はどう決まる?

保険料率はどのように決まっているのか。これは健康保険と厚生年金保険で大きく異なります。

厚生年金保険の保険料率は原則一律

まず、厚生年金保険から。保険料率はここでは割り切って「一律」と考えて良いと思います(厚生年金基金が設立されているケースでは異なることもあり)。かつては公務員には「共済年金」という別の制度がありましたが、2015年10月から厚生年金保険に一元化されたため、今は公務員も民間サラリーマンも同じ制度に加入しています。

現在の保険料率は18.182%で、これを従業員と会社側で折半します。このため、我々サラリーマンが負担している保険料率は、半分の9.091%ということです。

なお、厚生年金保険の保険料率は2004年から毎年少しずつ引き上げられてきましたが、その引上げも今年9月が最後となります。それ以降は、18.3%の保険料率で固定されることになっています(公務員は経過措置により1年遅れで18.3%に引上げ)。

健康保険の保険料率は千差万別

そして次に健康保険。その保険料率は人によって様々です。

すなわち、自身がどの健康保険に加入しているかが保険料率の高低に影響しています。大きく分けて、健康保険組合協会けんぽ、共済組合の3種類があり、それらの特徴を簡単に書くと次のとおりです。

健康保険の種類 概要 加入者 組合の数
健康保険組合 企業が独自に設立・運営 その企業で働く人(大企業の従業員が多い)とその家族 約1400
協会けんぽ 公的組織である全国健康保険協会が運営 独自に健康保険組合を作っていない企業の従業員とその家族 1(47都道府県支部あり)
共済組合 省庁や都道府県等が設立・運営 国家公務員や地方公務員とその家族 約80

自分がどの健康保険に入っているかは、保険証(組合員証ともいう。最近はカード型が多い)を見れば一発で分かります。例えば、「●●(←企業名)健康保険組合」「全国健康保険協会 ●●(←都道府県名)支部」「●●省(←省庁名)共済組合」などと書かれているはずです。

健康保険組合・共済組合の保険料率

健康保険組合と共済組合の保険料率は、その組合ごとに決まっています。厚生労働省のデータによると、健康保険組合の平均は9.0%、共済組合の平均は国家公務員共済組合で8.2%、地方公務員共済組合で9.4%となっています。

次に触れる協会けんぽの保険料率と比べると低めですが、さらに、その保険料率も労使折半(1対1の割合で負担)ではなく、会社側が多めに出してくれているケースもあります。つまりその分、働き手側にとっては有利というわけです。

自分が加入している健康保険組合or共済組合の保険料率(自己負担分)はいくらかを知りたい方は、職場の総務担当に聞けば分かると思います。

協会けんぽの保険料率

協会けんぽは組織としては1つなのですが、保険料率は都道府県ごとに異なっています。どの都道府県の保険料率が適用されるかは、働く人の住所ではなく、原則として企業の所在地で判断されます。

都道府県間の保険料率にはそこそこの差があります。協会けんぽのウェブサイトによると、最も高い保険料率は佐賀県の10.47%、逆に最も低いのは新潟県の9.69%です。しかも、これはまだ激変緩和のための経過措置であり、実際の開きはもっと大きくなっています。

なぜ都道府県ごとに保険料率が違うのか、という疑問に対しては、同ウェブサイトで次のように説明されています。都道府県ごとに医療費を抑える取り組みを促進させようという狙いがあるようです。

Q1:なぜ都道府県によって保険料率が違うのでしょうか?

都道府県ごとに、必要な医療費(支出)が異なるからです。

健康保険は、病気やけが、またはそれによる休業、出産や死亡といった事態に備える公的な医療保険制度です。サラリーマンなど、民間企業等に勤めている方とそのご家族が加入する制度で、被保険者(勤めている方)と事業主が保険料を負担しています。

都道府県ごとの保険料率は、地域の加入者の皆さまの医療費に基づいて算出されています。疾病の予防などにより加入者の皆さまの医療費が下がれば、その都道府県の保険料率を下げることが可能な仕組みになっています。逆に、加入者の皆さまの医療費が上がれば、その都道府県の保険料率は上がります。

なお、都道府県間の年齢構成や所得水準の差異が保険料率に影響することがないよう調整しています。


なお、協会けんぽの保険料率は従業員と会社側が1対1の割合で負担することになります。

このため、協会けんぽの加入者の方は、負担している保険料率を自分で調べることが可能です。お手元の保険証を見れば、「全国健康保険協会 ●●支部」と書かれてあります。「●●」には都道府県名が入るので、協会けんぽのウェブサイトからその都道府県の保険料率を調べて、それを2分の1にすれば良いのです。

結びに代えて

このようにして決められた「標準報酬月額」と「保険料率」を掛け合わせることで、健康保険と厚生年金保険の保険料が算出され、毎月の給料から粛々と差し引かれているというわけです。

なお、今回は紹介しませんが、ボーナスから引かれる保険料も似たような仕組みで決められます。また、介護保険の保険料についても少しアレンジすれば同じように計算できます。

高齢化の影響でこれらの保険料率は今後また引き上げられると思われ、その分、手取りは少なくなる一方です。そのような中でも毎月の積立投資額はしっかりと確保できるよう、収入を増やし、支出を減らすことを心掛けねば…と考える今日この頃です。